「忙しすぎて普段在庫管理ができないから、決算前になると慌てて棚卸しが始まりバタバタする。」
「社長や従業員が経費の領収書を出し忘れていて、決算間際になって慌てて集め回らなければならない」
中小企業で経理を担当されているかt、社長業と兼任しながら経理も見ている経営者の方の中にはこんな決算前の悩みを持たれている方も多いのではないでしょうか。
決算前にばたついてしまう方の中には、決算前にどんな手順で何をしていけばいいのかの棚卸しができていない方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では中小企業が決算の前に必要な作業を、省略することなく、詳細にステップごとに案内しています。
決算前の苦しみから逃れたい方はぜひ参考にしてください。
中小企業が決算前に必ずやるべきことリスト【STEP15】

1. 売上・仕入・経費などの証憑(領収書・請求書等)の整理
- 年度内の売上・仕入・経費伝票、請求書、領収書、納品書、レシートなどをすべて集め、日付順・科目別にファイリング
- 電子帳簿保存法対応の有無も要確認(電子保存の場合は適切なデータ管理)
- 未収・未払い分(売掛金・買掛金)のチェックと明細作成
2. 帳簿・会計ソフトの入力と照合
- 仕訳入力が漏れていないか最終確認
- 通帳・現金出納帳と会計データの突合せ(残高チェック)
- クレジットカード・電子マネー利用分も全て反映
- 仮払金・立替金・未払費用の精算状況確認
3. 棚卸資産(在庫)の実地棚卸・評価
- 期末日時点での在庫数のカウント(棚卸表作成)
- 不良在庫や滞留在庫の有無チェック・評価損計上の検討
- 商品・原材料・仕掛品・製品・消耗品ごとに正確に集計
- 倉庫、店舗、外部委託分も忘れず集計
4. 固定資産・減価償却の確認
- 決算期までに購入・廃棄・売却した固定資産(建物、車両、設備、備品等)の一覧更新
- 減価償却計算のもれ・誤りがないかチェック
- 修繕費・資本的支出の区別、修繕記録の整理
- 固定資産台帳・リース資産の管理
5. 売掛金・買掛金等の債権・債務の残高確認
- 取引先別に売掛金・買掛金の残高明細を作成
- 入金・支払遅延の有無、回収不能リスクの精査
- 回収見込みのない債権は貸倒引当金・貸倒損失の検討
6. 借入金・リース・未払金等の精査
- 銀行借入金・リース債務・未払金の残高確認
- 利息・返済予定表の確認、未払利息の計上
- 新規借入・返済の反映漏れがないかチェック
7. 給与・賞与・社会保険関連の整理
- 決算期までの給与・賞与計算、未払給与・未払賞与の確認
- 社会保険料・労働保険料・住民税・所得税などの未払い分の計上
- 年末調整・法定調書提出状況の確認(会計年度が一致しない場合は注意)
8. 各種引当金の計上
- 賞与引当金、退職給付引当金、貸倒引当金、修繕引当金など必要な引当金の計算と計上
- 見積根拠や計算書類の準備
9. 税務・法定調書関連の事前準備
- 消費税・法人税・住民税等の税額見込み計算
- 決算期直前の節税対策(経費計上、備品購入、寄付金・役員報酬・保険料等の検討)
- 税理士との打ち合わせ・決算スケジュール共有
- 決算書・申告書のドラフト確認
10. 役員報酬・賞与・配当の最終決定
- 役員報酬や役員賞与(事前確定届出)の金額最終決定と議事録作成
- 株主配当を予定する場合は株主総会等での決議手続き
11. 各種契約・法的義務の確認
- リース契約・保険契約・賃貸借契約・委託契約などの期末残高・支払状況確認
- 法定保存書類(議事録・契約書類・登記簿等)の整理
- 各種助成金・補助金申請の進捗と必要書類の確認
12. 決算前の会計・経営分析
- 損益計算書・貸借対照表の予測値作成
- 前期比較・異常値チェック
- 粗利率・売上高・経費の推移や資金繰りの確認
- 節税や今後の資金需要に応じた打ち手検討
13. 事業計画・来期予算策定の準備
- 決算数値をもとにした来期の事業計画・予算案のたたき台作成
- 必要に応じて銀行・金融機関向けの資料作成
14. 監査・税理士対応のための資料提出・質問対応
- 税理士、監査法人からの資料リストを確認し、不足書類や証憑の追加準備
- 会計処理・取引内容の説明や証明資料の準備
15. その他、経営者としての最終確認事項
- 決算に向けての重要な意思決定(設備投資、廃業、合併・分割などがある場合は手続き準備)
- 今後の資金調達や人事計画も、決算数値をもとに戦略検討
スムーズな決算を迎えるポイント3つ

【1. 早めの書類整理・証憑集め】
「早めの書類整理・証憑集め」が決算前に重要な理由は、認識の通り決算業務の大半が証憑(しょうひょう)=領収書や請求書、契約書、納品書、銀行明細などの書類確認に依存しているからです。
これらが揃っていないと、売上や経費の計上、資産・負債の確認などすべての作業がストップしてしまいます。
特に中小企業の場合、日々の業務が忙しい中で「つい後回し」にしがちですが、決算期に一気にまとめて処理しようとすると、書類の紛失や見落とし、金額の記載ミス、日付の間違いなどが起こりやすくなります。
また、どこに何があるか分からず、探し物に多くの時間を費やしてしまい、最終的に経理担当も経営者も「ギリギリまで残業…」なんて事態にもなりかねません。
さらに、証憑がすぐに提出できないと、税理士や会計事務所とのやり取りもスムーズに進まず、修正依頼が増えて負担が倍増します。
早めに書類を集めて整理しておけば、足りない書類や不明点も余裕を持って対応でき、結果的に決算作業全体がスピードアップ。ストレスも大幅に減ります。
つまり「早めの書類整理・証憑集め」は、正確な決算書作成とミス・トラブル防止、そして担当者の負担軽減に直結する最大のポイントなのです。
【2. 残高・帳簿の事前チェック】
「残高・帳簿の事前チェック」が決算前をスムーズに進める理由は、最終的な決算書の数字を確実に合わせるための“下準備”ができるからです。
日々の取引入力や帳簿管理は、どうしても忙しさや人的ミスで「金額の誤入力」「二重計上」「入れ忘れ」などが発生しがちです。月次の集計をしているつもりでも、未処理の仕訳やチェック漏れが溜まっていることもよくあります。
このまま決算期に突入すると、「通帳残高と帳簿が合わない!」「売掛金の回収漏れがあった!」「経費の仮払い精算がされていない!」といった“ズレ”が大量発生し、慌てて確認や修正作業に追われてしまうのが現実です。
決算直前にこうした修正が多発すると、税理士や会計事務所からの問い合わせも増え、余計な手間や時間がかかります。
特に残高が合っていないと、決算書自体が作れない・正しい利益が分からない・最悪の場合申告期限に間に合わない…という事態にもつながりかねません。
だからこそ、決算の少し前(できれば2か月前~1か月前)に、通帳残高と帳簿の付き合わせ、売掛・買掛残高のチェック、未処理仕訳の整理など、主要な残高・帳簿を事前に点検しておくことがとても大切です。
早めのチェックでトラブルを未然に防ぎ、決算作業を落ち着いて進められる“土台”を作れる――これが、決算前の大事なポイントなのです。
【3. 税理士・専門家との早期相談】
「税理士・専門家との早期相談」が決算前をスムーズに進めるポイントである理由は、早い段階で専門家と連携することでミスや手戻りを大幅に減らせるからです。
中小企業の決算では、経理担当者や事務員だけでは判断が難しい仕訳や税務処理、法改正への対応など、専門的な知識が求められる場面が必ず出てきます。
決算直前や締め切り間際に「これって経費にできるの?」「減価償却の計算方法は合ってる?」「未払い経費や未収入金の処理はどうする?」などの疑問が噴出し、急いで税理士に確認するケースも多いですが、そのタイミングだと税理士側も多忙で細かなチェックやアドバイスが行き届かないことがよくあります。
また、決算・申告業務は一度間違うとやり直しに膨大な時間と労力がかかります。書類の差し戻しや追加資料の提出、帳簿の再集計が必要になり、最悪の場合は申告期限を過ぎてしまうリスクもゼロではありません。
早めに税理士・専門家に相談することで、「どの資料が必要か」「気をつけるべきポイントは何か」「節税や助成金の最適な対応」などを前もって整理でき、安心して決算作業に臨めます。
加えて、期末対策や経費計上のアドバイス、今年度の利益や納税額のシミュレーションなど、プラスαのサポートも受けやすくなります。
結果として「焦らずミスなく、最大限メリットを得た決算・申告ができる」――これこそ、税理士・専門家との早期相談が決算前の大事なポイントである理由です。
終わりに
今回はスムーズな決算期を迎えるための15ステップと、大切なポイントを3つ紹介しました。
これまで中小企業様とお仕事させていただく中で多かったリスケの理由トップ2が、「急な現場が入った」「決算前で忙しい」でした。
決算期のばたつきはもしかすると大事なお仕事のチャンスを手放してしまう理由につながるかもしれません。
必要な作業を棚卸しし、慌てないことでミスなく決算を乗り切りましょう。
また、今回は手順の案内をしましたが、システムを導入してミスを減らすことも時短につながります。
以下の記事では業務効率化ツールについての比較や紹介をしてますので、併せて読んでみてください。
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