「補助金で車を買えますか?」
これは私が中小企業を何百社も訪問している中で、社長から最も多く寄せられた質問のひとつです。
経営者としては、設備投資や業務効率化、人手不足対策など、さまざまな場面で車両の導入や更新は重要なテーマですよね。
軽バンから営業車、工事用トラックまで「うちも新しい車があれば…」と考える方も多いと思います。
しかし、結論から言うと、国の補助金・助成金は原則として“汎用的な車両購入”には使えません。
これは、補助金制度の本質に、あくまで誰でも自由に使えるものではなく、その事業や投資が社会的意義・経済的効果を持つ場合に限定的に支援する。という考え方があるからです。
「車が古くなったから」「社用車を増やしたいから」といった一般的な目的では、補助金の対象にならないことがほとんどです。実際、申請段階で“車両購入”と明記すると、即座に「対象外」とされてしまうケースが圧倒的に多いんです。
また、ネットで「補助金 車 購入」と調べると「補助金で車が買えた!」という体験談やコンサル会社の広告も見かけますが、これはごく一部の特例や、事業の性質が特殊なケースだけです。私もよく、「知り合いの社長から補助金で車買ったって聞いたんだけど」と言われました。
しかし、多くの社長がイメージしている「普通の営業車」「社用車」「配達車」などへの単なる買い替え・増車には、残念ながら補助金は使えません。
とはいえ、「絶対にダメ」と決まっているわけではありません。一定の条件や目的が合致すれば、特定の補助金で車両購入が認められる場合もあります。
本記事では、私の実体験をもとに「車両購入に補助金が認められる例外的なパターン」「申請のコツ」「よくある勘違い」まで、分かりやすく解説します。
無駄な手間や誤解を防ぎ、後悔しないためにも、まずは“原則NG”という大前提から正しく理解していただければ幸いです。
車に活用できる補助金・助成金一覧
制度の名称 | 公募期間 | 対象車両 | 補助対象者 | 補助上限額・補助率 | 主管省庁等 |
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クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金) | 2024年4月~予算枠消化まで(受付終了見込み2025年2月13日) | 電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池自動車(FCV)の新車(※中古車・営業用車両は対象外) | 個人、法人(営業用でない自家用車両の購入者) | EV最大85万円、PHEV最大55万円、FCV最大255万円 | 経済産業省(資源エネルギー庁)*執行:一般社団法人次世代自動車振興センター |
商用車等の電動化促進事業(トラック部門) | 2025年3月31日~2026年1月30日 | 業務用トラックの電動車両(新車BEV・PHEV・FCV)+付帯する充電設備 | 貨物自動車運送事業者、自家用商用車(総重量2.5t超)を業務使用する事業者、商用車リース事業者、地方公共団体等 | 車両購入費の1/2~3/4補助(※BEVは2/3補助など)(充電設備も一部補助) | 環境省(令和6年度補正予算、国交省・経産省と連携)*執行:一般財団法人環境優良車普及機構(LEVO) |
商用車等の電動化促進事業(タクシー・バス部門) | 2025年4月28日~(公募開始) | 電動タクシー専用車両、路線バス等の電動車(新車BEV・PHEV・FCV)+充電設備 | タクシー事業者、バス事業者(中小事業者等で電動化計画を策定した者など) | 車両導入費の一部補助(※補助率はトラック部門と同様) | 環境省(令和6年度補正予算)*執行:公益財団法人日本自動車輸送技術協会(JATA) |
建設機械の電動化促進事業(産業車両等脱炭素化補助の一環) | 2024年5月27日~2024年9月30日 | 国交省認定の「GX建設機械」(電動建設機械)とそれに付随する充電設備(新規導入) | 建設業者、建機レンタル・販売事業者等(※販売店等による代理申請が原則) | 購入費の2/3補助(上限2億0933万円) | 環境省(当初予算、経産省・国交省と連携)*執行:一般社団法人日本建設機械施工協会(JCMA) |
低炭素型ディーゼルトラック普及加速化事業 | (令和6年度公募:~2025年1月31日終了/令和7年度公募:2025年6月9日~2026年1月30日) | 燃費性能の高い事業用ディーゼルトラック(総重量3.5t超・新車、※2025年度燃費基準達成車) | 中小規模のトラック運送事業者(資本金3億円以下または従業員300人以下)および該当事業者に車両をリースする事業者 | 1台あたり最大75万円(大型トラック・廃車ありの場合)。例:大型75万円、中型42万円、小型15万円(廃車なしの場合は大型50万円等) | 環境省(経産省・国交省連携のCO₂抑制対策補助)*執行:一般財団法人環境優良車普及機構(LEVO) |
日本財団「福祉車両配備」助成 | 2024年7月1日~7月12日 | リフト付きバス、スロープ付き車いす移送車など福祉車両(日本財団が車種指定) | 社会福祉法人、NPO法人、公益法人、一般社団・財団(非営利型)等 | 車両の種類・設備により設定額が異なる(※リフトバス等は車種ごとに定められた額を助成) | 公益財団法人日本財団(ボートレース交付金による民間助成) |
JKA(競輪・オートレース)福祉車両整備助成 | 第1回:2024年7月1日~11月1日第2回:2025年5月26日~6月20日 | リフト付きバス、送迎用車いす車両など(JKAが指定する福祉車両) | 社会福祉法人、NPO法人、公益法人など | 車種や装備内容により助成額が異なる(定額助成) | 公益財団法人JKA(競輪・オートレース振興法人)*所管:経済産業省(所管公益法人による助成)v |
車両購入に補助金が認められる例外的な5パターン

電気自動車(EV)・燃料電池車(FCV)など環境配慮型の車両
- 「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)」などで、EV・PHEV・FCVなどのエコカーを新車で導入する場合は補助対象
- 省エネやCO₂削減の目的が明確な場合のみ認められる
商用トラック・バスなどの業務用特殊車両
- 「商用車等の電動化促進事業」や「低炭素型ディーゼルトラック普及加速化事業」など、運送業やバス事業者が一定の条件下で電動トラック・バスなどを導入する場
- 専門用途・業務効率化や環境対策の一環としてのみ対象
福祉車両の導入(リフト付バス・車いす対応車など)
- 社会福祉法人やNPO法人等が、福祉車両(リフト付き・送迎バスなど)を導入する際、日本財団やJKAなどの助成が使える
- 高齢者や障害者の移送など公益性が高い場合に認められる
新規事業進出・新分野開拓のための特定用途車両
- 「新事業進出補助金」や「ものづくり補助金」等で、飲食の移動販売用車両や現場作業用の特殊車両など、“新しい事業モデル”に不可欠な車両導入で例外的に認められることがある
- 既存の通常業務の営業車はNG
建設機械・作業用特殊車両の導入
- 「GX建設機械導入補助」などで、電動建設機械や特殊作業車両(フォークリフト・クレーン・高所作業車など)は、一定の条件下で補助対象となる
- 一般の乗用車・バンは不可、建設機械の認定が必要
車を補助金申請する4つのコツ

設備投資の一部として必要性を明確にする
ただ「車を買いたい」だけではなく、「この車がないと事業計画が実行できない」「売上UP・雇用創出・地域課題解決につながる」など、車両が果たす具体的な役割を書面でしっかり示す必要があります。
単独の車両購入目的ではなく、他の設備・ICT導入・業務効率化と組み合わせて申請する
たとえば「新規移動販売のための車両と、商品保管用の冷蔵庫、決済システム、HP制作」など複数項目で事業全体の投資計画として補助申請することで、採択の可能性が上がります。
過去の採択事例を事務局HPで必ず確認する
各補助金の「過去の採択事例」ページや公式FAQに、「どんな車両が認められているか」が明記されている場合があります。事前にチェックしておきましょう。
事前着手(契約・発注)は絶対NG
交付決定前に車両の契約や購入をしてしまうと、補助対象外になります。必ずスケジュールを守ること。
よくある勘違い
「どんな車でも補助金対象になる」と思い込んでしまう
→ほとんどの補助金で“汎用車両は対象外”です。特に社用車・営業車・配達車は原則NG。
「補助金で中古車も買える」と誤解するケース
→多くの補助金で、中古車は対象外(新車のみ)となっています。申請前に必ず要件を確認してください。
「補助金がもらえる前提で先に購入してしまう」
→前述の通り、交付決定前の購入は一切認められません。うっかり発注すると補助金が下りません。
「車両購入のみ」で申請する
→申請審査で落ちやすく、そもそも認められないことが大半です。「事業全体」の一部としての車両導入計画を立てましょう。
ネットや一部コンサル会社の「車もOK!」という言葉だけで判断する
→“実際の要綱”や“事務局への確認”が必須。情報が古い/誤っている場合も多いので注意。
まとめ
ここまで、補助金や助成金で車両購入が認められる例外的なパターンや、申請時に押さえておきたいコツ、そして多くの方が誤解しやすいポイントについて詳しく解説してきました。
繰り返しになりますが、「車両購入は原則NG」という大前提をしっかり理解した上で、「なぜこの車が今の事業に不可欠なのか」「社会的な意義や業務効率化、環境対策など補助金の目的にどう合致するのか」をきちんと説明することが、申請・採択への第一歩となります。
また、補助金を使った車両導入には、【新車であること】【交付決定前の購入は不可】【事業全体の一部として申請する】など、いくつもの細かな条件や注意点があります。少しでも「いけるかも?」と思った場合は、必ず最新の公募要領や採択事例、FAQを読み込み、疑問があれば事務局や専門家に相談することが失敗を防ぐコツです。
さらに、補助金は毎年内容が見直されたり、突発的に新しい制度が公募されたりと情報が絶えず変わ率づけます。
ネットの情報や知り合いの体験談に惑わされず、「自社の場合はどうか」をしっかり確認する姿勢が大切です。
このブログをきっかけに、正しい知識で補助金活用を進めていただけたら幸いです。
このほかにも、設備投資におすすめの補助金や、ものづくり補助金の活用事例なんかもまとめていますので、併せて読んでみてください。
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