最初に結論からお伝えすると、外国人技能実習生であっても社会保険等の加入は要件を満たす場合は「必須」です。
少子高齢化、生産年齢人口の減少が続く現代では、外国人採用を実施・検討されている中小企業は多いと思います。そこでこの記事では、社会保険の加入要件やリスクに関しての情報をお届けします。
▶︎この記事でわかること
- 技能実習生も社保加入は必須?
- 各保険(健康・年金・雇用・労災)の加入条件と手続きフロー
- 脱退一時金・任意保険の概要
- 2025年以降の制度改正・罰則リスクもカバー
- チェックリスト
1.技能実習生と社会保険加入の義務
2025年現在、技能実習生は国籍に関わらず健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険の加入対象です。法律は「適用事業所に雇用される全労働者に適用」と定めており、実習生であっても例外ではありません。
健康保険・厚生年金保険に加入している会社、工場等の適用事業所に常時使用される方は、国籍や性別、賃金の額等に関係なく、被保険者となります。(原則として70歳以上の方は健康保険のみの加入となります)
2.各保険の加入要件と手続き方法
2-1 健康保険・厚生年金
- 法人に雇用された実習生はすべて適用対象
- 任意適用事業所の場合:週20時間以上・2ヶ月超・月額8.8万円以上なら加入義務
- 非正規契約でも条件を満たせば対象
非正規契約で対象になる条件は、2つです。
①週の所定労働時間が正社員の4分の3以上働いている。
②勤務期間が2ヶ月を超えて引き続き雇用される見込みがある。
<手続き>入社後5日以内に「被保険者資格取得届」+会社は保険料を給与天引きで納付します。
加入手続き詳細はこちら(日本年金機構)
2-2 雇用保険
雇用期間が31日以上かつ週20時間以上勤務の場合、自動的に加入対象となります。
手続きの詳細は、ハローワーク公式サイトをご確認ください。
2-3 労災保険
業務中・通勤中の事故を補償する強制保険で、全労働者が対象です。企業が事業所単位で加入します。
参考:労災保険制度(厚生労働省)
3.脱退一時金と任意保険について
厚生年金について外国人が日本国籍を取得していない場合、納付期間が6ヶ月以上であれば、帰国後2年以内に「脱退一時金」の請求が可能です。
脱退一時金とは、ざっくりと説明すると「年金の返金」のようなものです。
日本で年金を払っていた外国人で、
・自分の国に帰ったあと(日本に住んでいない)
・年金をまだもらっていない
・払った期間が6カ月以上ある
という人が申請すると、もらえることがあります。
重要な点として、返金を受けられるのはあくまで労働者です。会社が支払った分は返金の対象にはなりません
4.2025年最新制度改正・届出スケジュール
2025年4月以降、特定技能制度の定期届出が年1回方式へ変更されます。
技能実習制度にも追加的な届出変更が予定されており、外国人技能実習機構(OTIT)の公式サイトから最新情報を確認してください。
5.加入漏れや不備によるリスク
- 未加入:在留審査での不許可リスク(出入国在留管理庁(法務省)が審査)
- 加入遅延:改善命令・業務停止・罰則(金銭徴収)
- 手続き不備:申請書類の却下、資格取消しも
- 改定未対応:2025年以降の届出漏れによる調査対象化
6.実務対応のチェックリスト
🟡【1】受入前準備(技能実習計画申請前〜入国前)
作業 | 内容 |
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① 自社の保険加入状況の確認 | 健康保険・厚生年金・雇用保険に加入しているかチェック。 法人設立後すぐの場合、事前に「適用事業所」手続きが必要 |
② 技能実習計画の提出 | 技能実習機構に計画提出(ここで法令順守体制のチェックもあり) |
③ 雇用契約の締結 | 日本語・母国語で雇用条件通知書を交付。保険加入予定を明記 |
🟠【2】入国後・雇い入れ時
作業 | 内容 |
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④ 雇用保険の資格取得届(5日以内) | 労働者として雇い入れた日から5日以内に提出(ハローワーク) |
⑤ 健康保険・厚生年金の資格取得届(5日以内) | 日本年金機構に「被保険者資格取得届」提出 |
⑥ 労災保険の適用確認 | 常時使用している労働者であれば、自動適用。特に追加手続き不要 |
⑦ 社会保険被保険者証の交付 | 健康保険証を本人に交付(必要に応じて翻訳も) |
⑧ 給与計算システムの整備 | 社会保険・雇用保険料の控除計算と源泉徴収体制を整備する |
🔵【3】就労中の継続対応
作業 | 内容 |
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⑨ 月々の保険料納付 | 会社が毎月納付(労使折半)。未納は重大な違反に |
⑩ 賞与支払届の提出 | 賞与がある場合は健康保険・厚生年金の届出も忘れず |
⑪ 社会保険料の年末調整反映 | 所得税・住民税控除への反映を忘れずに |
⑫ 賃金台帳・労働条件通知書の保管 | 社会保険加入状況の証明にも使用されます。監査時にも確認対象 |
🔴【4】実習終了・帰国時
作業 | 内容 |
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⑬ 雇用保険資格喪失届 | 離職日の翌日から10日以内に提出(ハローワーク) |
⑭ 健康保険・厚生年金資格喪失届 | 離職日の翌日から5日以内に提出(年金事務所) |
⑮ 離職票交付 | 技能実習生の希望があれば交付(雇用保険) |
⑯ 脱退一時金の案内 | 外国人本人に「年金脱退一時金」申請の案内を行う(会社が代行は不可) |
7.まとめ:制度を整え、信頼される職場へ
技能実習生への社会保険未加入は、企業リスクだけでなく実習生の安心や企業の評価を損ないます。加入手続きだけでなく、脱退一時金や任意保険などフォロー体制を含めることで、働きやすく信頼される環境作りが実現します。
2025年度の改正にも柔軟に対応できるよう、社内体制・書類テンプレート・定期チェック体制など、備えのある企業スタンスを築きましょう。
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